国家資格である「公認心理師」
「公認心理師」という新しい国家資格をご存じですか。
心の健康をサポートし、医療や教育などの分野で活躍が期待されています。
臨床心理士とは何が違うのか。
頼れる身近な存在になるのか。
新資格が今後どんな現場でどう生かされることを期待されて新設されたのか、歴史的背景から解説していきます。
心理職を国家資格化
従来、日本では精神疾患症状に対しては投薬中心の治療でした。
その投薬中心の治療では症状は改善は見られたものの、何度も再発をしていました。
しかし、医師による勧めでカウンセリングを受けられた患者さんは、症状が再発しても軽度で済んだようです。
精神疾患が発症した時のカウンセリングがとても効果的なものとなったことが大きな要因となったようです。
このことは、薬は症状を改善し、カウンセリングは対処力を鍛えられることも意味しています。
カウンセリングは、心理学の実証的な理論に基づき、
技法や症状によっては投薬よりも再発率が低いとの研究もあります。
英国などでは、ずいぶん前から公的医療制度に取り込まれております。
従来の臨床心理士は…
カウンセリングを主に担う臨床心理士は、大学院修了が必須の高度な資格であるのに対し、
民間の資格であるため、非常勤のみ・複数職場の兼務の職場が大半が占めていました。
雇用が不安定にもかかわらず、休日に専門書を読み、カウンセリングのプログラムに膨大な時間を費やして来ています。
しかし、国家資格でないため活躍の場が広がりづらく、社会貢献への繋がりも少ないです。
こういった背景があったため、心理職の国家資格化を目指した協会などが立ち上がりました。
2015年に議員立法で公認心理師法が成立し、心理職の国家資格が生まれることが決定となりました。
健康保険を使って公認心理師から心理療法を受けられるようになれば、もっと多くの方が心理療法を受けやすくなるはず、と考えられたようです。
公認心理師ができても民間資格の臨床心理士はなくなりませんが、公認心理師は心理職の主たる資格となるであろうと予測されています。
学校で児童・生徒の心のケアをするスクールカウンセラー(SC)に必要な資格としても、文部科学省は公認心理師を加えられました。
厚生労働省は既に健康保険の対象となっている心理テストなどについて、公認心理師も携われる形にする改訂にもなってきました。
しかし、カウンセリングを健康保険の対象に加えるかについては、一定の有効性があるというデータがまだ必要だそうです。
「質の向上」期待
公認心理師の創設で、心理職の「質の向上」はかなり期待されています。
学部から大学院までの、6年間の教育になったことで、質の高い人材を養成できる態勢が整ったとしています。
更に頼れる価値ある制度になると期待されています。
しかし、一部の専門家からは公認心理師の試験やカリキュラムのあり方に疑問の声も出ております。
臨床心理士の試験には論文や面接があり、5年ごとの更新制度がありますが、対して公認心理師は試験はマークシートのみで、更新制度などがないなどが挙げられ、
民間資格の臨床心理士と比べて仕事の適性や専門知識を測るには不十分ではないかという声もあることは事実です。
今後の実績に注目が集められています。
医師との関わり方
認知症やガンなど入院患者の心理的なサポートを行う「リエゾンチーム」では、常勤の臨床心理士2人が積極的に病棟に出向き、医師と心理士の役割は違うという認識を持って、専門性を発揮できる、効果的なチーム医療となっています。
しかし、そうでない場合ケアは主治医の指示によって行われるものとなっております。
海外では、医師と心理士は専門家として対等となっていますが、日本では病院でも、医師を中心に看護師、薬剤師、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士らによる「チーム医療」が欠かせないにも関わらず、心理士だけ国家資格でないため、肩身が狭いイメージを持っていた方も多くいました。
日本では長く歴史から、心の問題は「自己責任」として片付けられがちでした。
しかし、毎年2万人以上が自ら命を絶っています。効率や成果が優先される競争社会に挫折した方々も多くおられます。
クライエントの多くは、言動を周囲に理解されないと諦めています。
さらに自分をさらけ出せないといったクライエントは、自身の性格・考え方を振り返った、「気づき」を得ることも難しくなります。
専門家の力を借りることで救えた命もあったかもしれません。
参考:厚生労働省
まとめ
精神疾患が発症した時のカウンセリングがとても効果的なものとなるという認識が、実証として次第に広がりつつあります。
カウンセリングによる心理学の実証的な理論は、さらに公的な医療制度に取り込まれることが期待されることでしょう。
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